LRQAの年2回発行の報告書によると、児童労働リスクは、環境・社会・ガバナンス（ESG）サプライチェーンリスクのパフォーマンスが最も高い国と最も低い国を分ける重要な要因となっています。
しかし、住民を避難させる大規模な紛争が増加する中、移民労働者に対する強制労働や人権侵害も、どの国でも懸念事項として指摘されています。2023年には、最もリスクの低い国でも、児童労働、透明性、労働時間、政策のスコアが悪化しています。
この格付けは、LRQAのサプライチェーン・インテリジェンス・プラットフォームであるEiQに集約された、20の主要セクターにまたがる100以上の地域における年間25,000件のサプライチェーン監査のデータを用いて行われました。地域は、労働、安全衛生、環境、企業倫理、マネジメントシステムの5つのカテゴリーに集約された38以上の重要な指標に対して評価されました。
LRQAのアドバイザリー（ESG）担当マネージング・ディレクター、ケビン・フランクリンは次のように述べています：
「私たちは、絶え間ない変化が唯一の不変である時代に活動しています。私たちがサプライチェーンの現場で目にするESGのトレンドは、ロシア・ウクライナ紛争やイスラエル・ハマス紛争のような世界的な危機と直接的なつながりを示しています。これらの事象は、グローバルな事業運営に予期せぬ連鎖的な影響をもたらし、さまざまな分野における人権侵害をさらに激化させています。」
「全体的にリスクが低いからといって、必ずしもリスクがないわけではないことを忘れてはなりません。デューデリジェンス規制の複雑化、リスク評価と情報開示基準の整合性の欠如は、透明性と信頼性のある報告のあり方を混乱させ続けています。」
「サプライヤーとの積極的なリスク管理には、サプライチェーンのESGリスク状況に関する知識を深めるための先見性と、現在および新たな課題を定期的に監視するための徹底した透明性と堅牢なデータが必要です。」
パキスタンは、2023年にサプライチェーンにおけるESG（環境・社会・ガバナンス）違反のリスクが最も高い国です。パキスタンは、バングラデシュ、インド、カンボジア、ベトナムなど、繊維製品や電子機器を製造する他の東南アジア諸国と並んで下位にランクインしています。
サプライチェーンリスクが最も低い国としては、日本、台湾、欧州の農業・製造業国であるポルトガル、スペインと並んでドイツがトップでした。
調達リスクの高い5カ国は以下の通り：
- パキスタン
- バングラデッシュ
- インド
- カンボジア
- ベトナム
調達リスクの低い5カ国は以下の通り：
- ドイツ
- 日本
- スペイン
- ポルトガル
- 台湾
最も高いリスク： パキスタン
世界最大の繊維・アパレル生産・輸出国のひとつであるパキスタンは、児童労働に関連する重大な課題に直面しています。2021年の輸出額253億ドルの60％以上を占めるパキスタンは、米国、英国、ドイツ、オランダ、中国などの主要な調達市場に繊維製品を供給しています。
農業や小規模産業などの部門を含む非公式の経済は、しばしば危険な状況で児童を雇用してきました。この問題に対処するため、法整備が進められてきましたが、その実施は難航しています。米国労働省国際労働局（ILAB）の調査によると、パキスタンは国際基準を満たす危険有害業務の最低年齢を定めていない22カ国のうちの1つです。ILABは2022年の調査で、パキスタンの子どもたちが性的搾取や危険労働を含む最悪の形態の児童労働にさらされていることを明らかにし、こうした恒常的な違反の原因は、執行資源の欠如と汚職にあると指摘しました。
最も低いリスク： ドイツ
対照的に、ドイツは自動車産業で知られ、歴史的に低リスク市場とみなされており、多くの主要指標でポジティブなスコアを出しています。ドイツの製造業は高品質の産業機械、設備、精密工具を生産しており、製造業とインフラ整備のグローバル・サプライ・チェーンに貢献しています。
ドイツでは、児童労働、賃金違反のリスク、長時間労働のリスクはすべて、今年も引き続き低リスクであり、火災安全、機械安全、労働安全など、安全衛生のほとんどの指標で改善が見られました。しかし、潜在的なリスクも顕在化しています。移民労働者のリスク、強制労働、人道的待遇はすべて、この1年でスコアが悪化しました。ロシアによるウクライナ侵攻後、多くのウクライナ人がドイツに逃れてきたため、ドイツは紛争国からの難民のホットスポットとなっています。難民は自暴自棄になり、非人道的な労働条件に追い込まれる可能性があるため、労働搾取の対象となります。