リスクマネジメントの新時代において、サプライチェーンはますます複雑かつ不透明になり、企業がサステナビリティ課題を効果的に管理することは難しくなっています。こうした課題を特定し、対応するために必要な「可視化」を提供する強力な手段が、サプライチェーン・マッピングです。
今回は、LRQA欧州担当シニアディレクターのタラ・ノートンに、企業がどのようにサプライチェーン・マッピングを活用してサステナビリティを推進し、リスクを軽減できるのかについて話を伺いました。
サプライチェーン・マッピングとは、サプライチェーンのあらゆる階層に関わる企業や組織の包括的な概要を作成し、製品やサービス（部品を含む）がどこから供給される可能性があるのか、各階層にどのようなプレイヤーが存在するのかを把握するプロセスです。この理解は非常に重要です。なぜなら、サプライチェーンの関係性は頻繁に変化し、サプライヤーが自社のサプライヤーを変更することで、サプライチェーンのリスクプロファイルが変わる可能性があるからです。マッピングによって、優先度の高いリスク領域を把握し、対応すべき課題を具体的に示すことができます。
これは、個々の取引の流れを正確に追跡する「トレーサビリティ」とは対照的です。トレーサビリティは確かに魅力的ですが、実現は難しく、サプライチェーンのリスクを包括的に理解し、デューデリジェンスを示すうえではあまり役立ちません。すべての出所を完全に把握しているという誤った安心感を与えることもありますが、複雑な多層構造のサプライチェーンを100％可視化できる企業は存在しないことを、私たちは何度も目にしてきました。
どこから始めるべきか
私の20年の経験から言えるのは、企業が直面する主要な質問のひとつは「マッピングをどのように始めればよいのか」ということです。私は常に、まず手元にあるデータから始めることを推奨しています。一次サプライヤーから始め、現在どこで調達しているのかを理解しましょう。企業によっては、すでに上流階層に関する情報を持っている場合もあります。完全なデータがなくても、特定の部品やその地域に関する知識は、初期マップを作成するうえで役立ちます。こうしたデータを統合できる優れたツールを活用すれば、情報の不足箇所を特定し、追加情報が必要な領域を優先し、リスクが集中する場所を見極めることができます。
効果的なサプライチェーン・マッピングのための戦略
サプライチェーン・マッピングの概念はシンプルですが、実行には戦略的な計画と関係構築が欠かせません。重要な戦略のひとつは、サプライヤーとの強固なパートナーシップを確保することです。この協力関係があれば、情報共有や迅速な対応が可能になります。必ずしも、サプライヤーが事業上重要な情報をすべて開示する必要はありませんが、リスクの高い部品については、契約に可視化要件を盛り込んだり、特定の下請け活動を直接管理したりすることも有効です。さらに、支払い条件の改善や長期的な取引関係といったインセンティブを提示することで、サプライヤーが必要な情報を提供しやすくなります。
コスト効率の高いサプライチェーンの可視化システム
現在の規制環境、特に欧州では、企業はサプライチェーン全体でより高い透明性を維持することが求められています。これをコスト効率よく管理するためには、サプライチェーン・マッピングの取り組みを事業戦略全体と整合させることが重要です。効果的な方法のひとつは、サプライヤーを絞り込み、情報やデータの管理を容易にすることです。データの可視化に関する契約要件は標準的な慣行とし、全社で一貫して伝える必要があります。また、サプライヤー情報を効率的に収集・管理するためには、構造化されたデータツールの活用も不可欠です。
LRQAでは、EiQがこのプロセスをどのように支援できるかを実際に確認してきました。EiQは、世界初のエンドツーエンド型サプライチェーンESGデューデリジェンスプラットフォームであり、現場から検証された独自のデータを組み込んでいます。構造化されたツールは、企業がリスクを理解するだけでなく、効果的なリスク軽減策を策定するうえでも役立ちます。
課題を乗り越えるには
その利点にもかかわらず、サプライチェーン・マッピングには課題があります。サプライヤーが情報開示に消極的な場合や、商品取引を含む特定のサプライチェーンは本質的に不透明な場合があります。ここで重要なのは「関与」です。サプライチェーンの中で最も重要な部分を理解し、しっかり関与しましょう。直接把握できない場合は、業界の仲間と協力したり、業界イニシアティブに参加したりする機会を探してください。
特定のサプライチェーンが特に不透明な場合は、少し立ち止まって考えることも重要です。サプライチェーンは広大です。まずは進展できる領域に集中し、その経験を活かしてより複雑な領域に取り組みましょう。さらに、企業は不透明性の根本原因を問い直すべきです。ある領域が可視化に抵抗する場合、業界の障壁を変えられるか、代替手段がないかを検討することが重要です。
LRQAは、サプライチェーン・マッピング、データに基づく洞察、そして現場での豊富な経験を組み合わせ、さまざまな業界のグローバルなサプライチェーンにおいて企業を支援しています。LRQAはサプライチェーンの構造を深く理解し、主要な調達拠点がどこにあるかを把握しています。EiQプラットフォームは、企業がサプライヤーをマッピングし、リスク領域を特定するのを支援し、サステナビリティに向けた前向きな取り組みを可能にします。ただし、忘れないでください。サプライチェーン・マッピングは、モノの動きをすべて追跡することではありません。製品やサービスがどこから供給される可能性があるのかを把握し、関連するリスクを理解し、サプライチェーンと協働して意味のある変化を起こすことが目的です。
LRQAとEiQが、ESG課題による事業への影響にどのように対応できるかをご確認ください。
