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カーボンニュートラルの取り組みを伝え、循環型経済の中で信頼性を築く

オルガ・リバス・カスティーリョン テクニカル・クラスター・マネージャー、ESG プロフィールを見る

カーボンニュートラルは、企業のサステナビリティ戦略における重要な柱となっています。規制、投資家からの圧力、そして消費者の期待の高まりによって、その重要性はますます増しています。一方で、こうした期待の高まりに伴い、企業の主張に対する信頼性もより強く求められるようになっています。

業種を問わず、多くの企業がパッケージや年次報告書などを通じて、気候目標への取り組みを公表しています。しかし、そうした主張に対する信頼は徐々に失われつつあります。BEUC(欧州消費者機構)の調査によると、欧州の消費者の69%が「グリーンな主張」に対して十分な情報を得ていないと感じており、カーボンオフセットの仕組みを理解すると、多くが「誤解させられていた」と感じる傾向にあるようです。

同時に、規制当局も対応を強化しています。EUでは、「気候中立」などの表現は、排出削減の確かな証拠がない限り、2026年以降使用が禁止される予定です。英国、米国、オーストラリアでも同様の動きが進んでおり、環境情報開示の基準が世界的に厳しくなってきています。

「これは単なる規制への対応ではなく、企業としての誠実さが問われています」と、LRQAのテクニカル・クラスター・マネージャーでありESG専門家のオルガ・リバスは説明します。
「オフセットには一定の役割がありますが、それを主なメッセージにすべきではありません。利害関係者がまず知りたいのは、企業が実際にどれだけ排出を削減したのかという点です。」

企業は、オフセットに大きく依存する戦略から脱却し、排出削減や循環型の取り組みに重点を置く方向へとシフトしています。とはいえ、重要な問いは残ります。カーボンニュートラルについて、どうすれば誠実かつ効果的に伝えられるのでしょうか?

「これは単にルールに従うことではありません」と、LRQAのESG専門家オルガ・リバスは語ります。「誠実であることが大切です。オフセットは助けになりますが、それが主なメッセージであってはなりません。人々が知りたいのは、企業が実際にどれだけ排出を削減したのかということです。」

 

カーボンニュートラルの本質:その意味と誤解されがちな点

信頼性のあるカーボンニュートラルの主張は、明確な定義から始まります。PAS 2060(今後ISO 14068に置き換え予定)のような枠組みは、排出量の定量化、削減、そして残余分に対する高品質なオフセットの活用まで、企業が体系的に取り組むための道筋を示しています。これらの枠組みでは、透明性のある情報開示と、理想的には第三者による検証も求められます。 

しかし、実際には多くの主張がこの基準を満たしていません。オフセットが広範な削減戦略の最終手段ではなく、主要な解決策として扱われるケースが多く、これが混乱を招き、消費者の懐疑心を強めています。

「オフセットには役割がありますが、それを主なメッセージにすべきではありません」とオルガは語ります。「利害関係者が知りたいのは、企業が実際にどれだけ排出を削減したのかという点です。特に排出量が多く、消費者との接点が多い業界では、この点が非常に重要です。」

排出範囲、期間、削減方法などについての明確な説明は不可欠です。これらが不明確な場合、善意の主張であっても誤解を招く可能性があります。

 

循環型の発想が重要な理由

カーボンニュートラルは、それだけで完結するものではありません。より大きなシステムの一部であり、そのシステム自体が循環型である必要があります。

循環型経済の考え方には、廃棄物を出さない設計、製品寿命の延長、資源の再生といった要素があります。これらは排出削減に直接つながります。バリューチェーン全体で資源の使い方を変えることで、排出を未然に防ぐことができるのです。

「排出削減の信頼性は、単なる数字の問題ではありません」とオルガは語ります。「システム全体がどう機能しているかが重要です。循環型の仕組みは、上流から下流まで排出を減らし、カーボンニュートラルの主張をより信頼性の高いものにします。」

カーボンニュートラル戦略に循環型の発想を組み込む企業は、オフセットへの依存を減らすだけでなく、将来の規制や利害関係者の期待に応える、より強靭なビジネスモデルを築いています。

 

2025年に求められる「信頼性のある情報開示」とは

現在の市場では、単なる表示だけでは信頼を築くことはできません。責任あるカーボンニュートラルの主張には、次の要素が必要です。

  • 範囲を明確にする:どの排出スコープ、拠点、事業を対象とし、どの期間をカバーしているのか
  • 手法を透明にする:どの計算基準を使い、どのように削減を実現したのか
  • 進捗を正直に伝える:絶対的な表現は避け、制約や今後の計画も含めて開示する
  • 正確な言葉を使う:「カーボンニュートラル」という言葉には条件を明示し、完全な影響ゼロを示唆する表現は避ける
  • 広い視点で説明する:ライフサイクル全体の排出やサプライヤーとの連携、循環型設計との関係を示す

「取り組みの複雑さを正しく伝えることが大切です」とオルガは言います。「スローガンではなく、実質が求められています。利害関係者は、野心ではなく証拠を見ています。」

科学的根拠に基づく目標(SBT)や、信頼できる検証を伴う主張を行う企業は、消費者・規制当局・投資家からの高まる期待に応えやすくなります。一方、不十分な情報開示は規制リスクを招くだけでなく、社内の理解や協力を得る妨げにもなります。逆に、明確で検証済みのストーリーは、社内の足並みをそろえ、利害関係者の信頼を高め、サステナビリティ担当者がより強いリーダーシップを発揮する後押しとなります。

 

独立したESG保証で信頼性を高める

独立したESG保証は、カーボンニュートラルの主張に客観性と説明責任を加え、国際的な基準との整合性を示すうえで有効です。LRQAは次のような支援を提供しています。

  • ISO 14064-1およびGHGプロトコルに基づく排出データと削減実績の検証
  • ISO 14068に準拠したカーボンニュートラル認証取得の準備支援
  • 循環型の考え方を取り入れたスコープ3対応の評価とアドバイザリー 

「これらのサービスは、単なる形式的なチェックではありません」とオルガは語ります。「データと意思決定の質を高めることが目的です。検証は、企業が自らの影響を理解し、改善の機会を見つけ、利害関係者との信頼を築く助けになります。」

 

カーボンニュートラルの先にある、長期的な信頼構築へ

カーボンニュートラルはゴールではなく、循環型・低炭素社会に向けた重要な節目です。

完璧を目指すのではなく、着実な前進を目指すことが大切です。達成したこと、残された課題、そして改善を続ける姿勢を示すことが求められます。

 オルガはこう締めくくります。「最も信頼されるカーボンニュートラルのストーリーは、進化し続けるものです。削減を基盤に、循環型の発想で形づくられ、検証によって裏付けられる。それが、気候対応の“主張”を“信頼”に変える道筋です。」

今後、カーボンニュートラルはブランドの差別化要素ではなく、当たり前の基準になるかもしれません。リーダーを際立たせるのは、それをどれだけオープンかつ賢明に、脱炭素や循環型の取り組みに統合できるかです。

情報開示の積み重ねが、信頼を生みます

LRQAが、カーボンニュートラル戦略の検証と国際基準への整合をどのように支援できるかをご紹介します。詳細はこちら、または専門家にご相談ください。 

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